DE ROSA SK Pininfarina Disk + Campagnolo Record EPS DB 自組。アッセンブリー5日目その1。
長編です。
22.ブリーディング
用意するもの
・概ね完成に近付いたデローザ SK Pininfarina Disk
・カンパニョーロ EP18-HPDRF6EPS/EP18-HPDLR6EPS(左右エルゴパワー)
・カンパニョーロ DB-F160(160mm用フロントキャリパー)
・カンパニョーロ DB-R140(140mm用リアキャリパー)
・カンパニョーロ純正ブリーディングキット DB-100
・カンパニョーロ純正ブレーキオイル LB-200S(100ml)/LB-200(200ml)
・M8スパナ
・2.5mmHEXレンチ
・ミノウラ レーススタンドRS-1800
作業もいよいよブレーキにオイルを引き、チェーンを張ったら調整を残すだけです。
ここから5日目、アッセッブリー工程の実質最終日5月27日の活動。
ブリーディングは、自組を決心する原因になった、ショップから断られた作業です。きっと激ムズです‼️
シマノのブリーディングの様子はネットで適当に探せますが、カンパは、ショップブログでテクニカルセミナーに参加してきた話は沢山ヒットする一方、ブリーディングの様子を記録したものはオフィシャルビデオ(Youtube)くらいしか出てきません。この記事は個人ブログでブリーディングの内容を記した歴史上初の事件かもしれません。いや、世界史は調べていないので、日本史上初か。(注1)
私は自己責任、万一これを読んで参考にした人がいても、それも自己責任ですけどね。
まず車体。
SKは前後ホイールを外してRS-1800に載せています。目的は前回記載の通り、ブリーディング時のブレーキオイルの経路を最適化するため。
あとはホイールを外しているので、キャリパーには黄色いトランスポーテーションブロックを差し込んでおきます。これはレバーを操作時にピストンが出ないようにするためですが、ホイール外しとブロック差し込みはセットです。ホイールを外したら必ずブロックを差し込みます。パッドを外してというかパッドを装着せずにオイルレベルツールを差し込むのがカンパニョーロ的には正解のようですが、私は持っていないし、ピストンをディスクレベルまでは動かさないといけない筈なので、ブロックでいいと思います。
最初にブリーダーキットを開封。
構成物は上の写真を参照。
シリンジが2本、チューブが2本です。穴がないシリンジ(シリンジAと仮称)がキャリパー側。長い方のチューブを繋ぎ、ピストンを目一杯押し込んでおきます。
手元に穴がある方(同シリンジB)がマスターシリンダー側。短い方のチューブを繋ぎます。ピストンは押し込まず、穴を通じてエアが出入りします。
写真で指しているエルゴパワー内側の穴に2.5mmHEXを差し込み、フリートラベルを一番S寄り(Short、時計・反時計でなく前方向です)に調整します。調整する際は、少しレバーを引いてください。そのままだとレバーが邪魔しているんでしょう、調整ネジに届きませんよ。
注入するオイル量がLongで最少、Shortで最多だからだそうです。構造を調べている訳ではありませんが、カンパニョーロがそう言っています。
続いて、PDFマニュアルには書かれていない工程ですが、レバー前側にある穴に同じく2.5mmHEXを差し込んで時計回りに回し、レバーを一番遠くします。
これはポジション調整機構ですが、エアが入っている間はストロークが大きいので、エア抜きでしっかり握れるようにするためでしょう。
続いて2.5mmHEXでエルゴパワー側のブリードバルブを外します。このOリングがマスターシリンダー側に残ることがあるらしいので、忘れないよう注意。
ここにシリンジBを接続し、手締めします。エルゴパワーの左右、キャリパーの前後の写真が適当に使われますが、気にしないでください。
次はキャリパーです。まずブリードバルブの小ボルトを外します。これも2.5mmHEXです。ボルトを抜いてもバルブは閉じている状態なので、仮にオイルが入っている状態でもこれでオイルが漏れる心配はありません。
このボルトは精度が低いです。イタリアのカンパニョーロがインチな筈が無いですが、余りにガタが大きいのでインチかと思ったくらい。なので、L字レンチを使う場合は、テーパー状等で接触面積が狭いロング側は避けた方がいいです。
シリンジAに3/4程オイルを吸い上げ、ボルトを抜いた箇所=ブリードバルブに接続します。シリンジAも手締めです。バルブの開閉にメガネレンチを使おうとしたので間に挟まっていますが、工具締めではありません。
写真のオイル量は3/4より少ないですが、既に注入を始めた後です。
ブリードバルブもイマイチな精度です。ナメないためにメガネレンチを使ったにも拘らず、12角では却ってヤマの高さが足りず滑ることがあります。スパナを使った方がいいです。測ったら対面は8.21mmと十分でしたが、対角は最初から面取りをして角が落ちています。メガネというか12角を使わせないためでしょう。つまり12角を使った私が悪いということで。
続いていよいよオイル注入。
(1)ブリードバルブを開き(外すほど回しちゃダメです。1/4も回せば十分)、ホース内にエアを残さないよう極力注意してシリンジAのピストンを押していきます。オイルがライン内を上がってシリンジBに溜まっていきます。
これでまず1工程。
シリンジBにオイルが上がっているところ(全部ではないです)
(1)-2因みにオイル交換の場合は、シリンジAへの注入量を多くして同じ作業をします。シリンジBに上がっていくオイルが古いオイルからフレッシュオイル(フレッシュな方が色が鮮やかな筈)に変わるところまで押し上げたところでシリンジBを外します。シリンジBは穴が空いているので、負圧が掛かりません。外す際にシリンジ内のオイルが漏れないよう、穴をテープで塞いだうえで、ブリードバルブ周辺はウエス等で養生しましょう。まるで自分がやったような言い方しますが、畳にオイルを零すと、畳が青くなってとれませんよ(^_^*)。それから再度シリンジBを接続し、第一工程をもう1回。
(2)シリンジAのオイルがライン内とシリンジBに溜まったら、今度はシリンジAのピストンを引き、シリンジAにオイルを逆流させます。これを時間をおいて数回往復します。細かい泡がいっぱい出てきますよ、きっと。
と言っているほど抜けている写真はないのですが。
(3)エアをきれいに抜くことが主目的になりますが、ここでの注意事項は、
①ピストンの押し引きはゆっくり。勢いが強いと細かい気泡が立ちます。見た目エアを噛んでいなくても、後で落ち着くとオイルとエアが分離し、1つの気泡に纏まることになります。
②とにかくオイルが上上に流れるよう経路を作る。或いは、一方向にするのには無理な場合でも、途中に山を作らず、エアが端に流れるようにする。メンテナンススタンドを使ってフレームのアングルを変えるのが早道。シリンジが着いた状態ではできませんが、ラインを閉じた後にはSKをひっくり返して置いたりしましたよ。
③最上部にセットされているマスターシリンダーがエアを噛まないよう、オイルをBからAに戻す過程では、オイルがBから抜け切らないうちにピストンの引きを止めること。
初めのうちは、結構しつこくエアが出ます。特にキャリパー側から出ます。最後まで残るのもキャリパー側です。
(4)レバーを開け閉めします。初めは弾き(ショックを与える目的か)、その後はゆっくり引く(気泡を押し出す目的か)感じです。尚、上下とも開いているので、レバーを引いてもタッチはスカスカです。
(5)レバーを引いてもオイルを動かしても気泡が出なくなったら、シリンジBのオイルレベルを低いところ(カンパによると10mm)までシリンジAにオイルを引き、ブリードバルブを閉じます。オートバイやMTBではブレーキレバーを握ったままブリードバルブ を素早く開け閉めするというテクニックがありますが、特にそれは必要ないようです。
(6)ブリードバルブを閉じたら、シリンジBを外します。注意事項は前述。とにかく零さないよう注意。
(7)マスターシリンダー(というかエルゴパワー側のブリードバルブ)の口目一杯までオイルを垂らします。なみなみの状態でバルブを閉じます。溢れた分を拭き取るのが正しいです。ブレーキクリーナーで綺麗にしましょう。マスターシリンダーのブリードバルブの指定トルクは僅か0.5N・m。ごく弱く締めるだけでOKです。
(8)キャリパーのブリードバルブからシリンジAを外し、ブリードバルブを締め、小ボルトを締めます。
(9)小ボルトを指定トルク0.5N・m(測らず極く弱くで可)、ブリードバルブを4N・mで締め、ブレーキクリーナーで洗浄して終わりです。
さて、上下のブリードバルブが閉じられました。ブレーキを握って手応えなく引ききれるようであれば、失敗。エアを噛んでいます。十分に手応えがあって引き代が残っていたら成功です。車体の向きを除き、前後やることは同じです。
以上でブリーディングを終了しますが、レバーのタッチがスポンジーな状態が残りました。ライン上を叩くとか書いてありますが、スカスカでなければライドは可能なので、乗って衝撃と経時で集めたエアを後で抜くのが話早いと思います。私はこの後2回のエア抜きで満足のいくタッチと効きを得ました。
このテの形状のマスターシリンダーはあまり信用していないのですが、きちんとやったつもりでも2回とも気泡が出たので、構造的に神経質なんだと思います。シマノのマスターシリンダー上にオイルファンネルと称する漏斗を載せる方式の方が安心。尤も、「安心感」だけでしょう。実際に気泡が出るのはマスターシリンダー側でなくキャリパー側だし。
漏斗といえば、、、(脱線します)
これですね。
Arti+Mestieriのtiltです。
イタリアン・プログレッシヴ・ロックの大傑作の1枚。
芸術家と職人の名の如く、優雅なメロディと艶やかなヴァイオリンに圧倒的手数で疾走するドラムが絡むこの上なくスリリングな1枚。
アマゾンのレビューでは☆4.7ですが、ライヴに連れていったあんまり興味を持っていない嫁曰く「どの曲も同じに聞こえた」。そこが弱点ですが。
以上脱線終わり。
ブリーディングが終わってブレーキ操作が可能な状態になったら、キャリパー位置アジャストに移ります。トランスポーテーションブロックを外し、対象の側のホイールを装着して回してみます。キャリパーとローターが接触する位置を確認、2本のマウントボルトを緩めたり締めたりして荷重によるズレ方向を確認、それから微妙にキャリパー位置を移動して、4mmHEXを6N・mで締めます。オートアジャスト機能みたいなもんはないし、トルクが5N・mに届くあたりからスライドが始まるので、結局カンと観察が頼りかと。フロントは簡単にアジャストできましたが、リアは多少手間取りました。空走時は若干シャラシャラするかと思いましたが、実走では音が出なくなりました。6N・mという決して強過ぎないトルクなので、ブレーキ操作によって左右のピストンがディスクを均等に押すよう動いたのかも。
尚、SKというかディスクロードというか今時のディスクバイクは、フラットマウントな訳です。
旧式のJekyll800は、インターナショナルマウント。ワッシャーでキャリパーの左右位置を移動してクリアランスを調整します。締め具合でクリアランスが変わるので、その辺を計算に入れないとシャラシャラいう接触音を消すのが難しい。という話らしいですが、慣れると結構簡単。
Jekyll800のリアブレーキキャリパー。
SK Pininfarinaはフラットマウント。
シム無しで調整できるのがメリット、っということになっていますが、そんなに調整幅大きい訳ではないんですけどね。まあ正直、シビアだなと初めは思いましたが、上に書いた通り、何だか乗ったら上手く収まった。ということは簡単かあ。
SK Pininfarinaのポストマウントリアブレーキキャリパー。
本日はここまで。
注1:オフィシャルビデオとテクニカルマニュアルから読み取れる情報に不足は感じず、MTB乗りやオートバイ乗りには難無くセットアップできると思うのですが、カンパニョーロのディスクブレーキセミナー受講ショップでしか作業を請け負ってはいけないことになっているので、それらには載っていない工程やノウハウがある可能性はあります。