パリのノートルダム大聖堂が4月15日から16日に掛けて火災に見舞われたのは、大変残念なニュースでした。
我が家では10年ほど前に訪問。嫁はそれ以前含めて複数回。私単独では3年前パリ出張したときにはシテ島も寄りましたが、サン=ジェルマン通りのパトリック・ロジェに土産チョコ(激ウマ‼️)買いに走る最中、閉館間際のコンシェルジュリーを見ただけで、ノートルダム大聖堂は顧みもせずスルー。
この3年前というのが、30年振りの大雨とかいうのにぶつかって、セーヌ川は市内でも氾濫寸前、
ルーヴルもオルセーも冠水の恐れありとして閉館、見たかったオランジュリーだけ開いていたので、予定通り(注1)行ってきて予想通りガッカリしてきたと。
元々好みでない印象派は私の心に刺さらないのですが、睡蓮の間でモネの一連の作品に囲まれても変わりませんでした。印象派好きの知人は私の写真と話だけで感動していましたけども。
30年振りとかいう割には、そのほんの2年半後の今年1月の大雨では、更に水位が上がったらしいです。
さて、ノートルダム大聖堂に戻ります。
フレンチ・ゴシックの精華です。
初期フレンチ・ゴシックの傑作です。
中央にバラ窓を抱いた69mの壮麗なファサード。
イタリアのゴシック教会のようなカラーマーブルやタイルによる色彩はありませんが、細かな彫刻の意匠に彩られたファサードには天を突き上げんとする力強さがあります。
西洋建築にのめり込み始めた頃特に好んだゴシック、この頃はそうでもなくなっていましたが、それでも必見アイテム。
石材部分は消失せず、建築物としては屋根と尖塔だけが落ちたということになりますが、ローマ遺跡なんか焼かれて石灰にされたってぐらいですから、再建に当たっては熱で劣化していないか調査が必要ですね。(注2)
見上げる際は頸を痛めないよう注意しましょう。
列柱の間に立つのは歴代のフランス王。フランス革命で一度破壊された王のギャラリー。
尖頭アーチはしつこく七重。
内部。ステンドグラス以外モノトーンで殺風景なのもゴシックの特徴。
身廊を仕切る柱には建築が始まった当時=ロマネスクの影響が残っています。
細くて長い長い幹が伸び上がり、枝となって繋がり合うのは、ヨーロッパの深い森のイメージ。
リブ・ヴォールトが分かり難い写真しかなかったので、大分低いコンシェルジュリーを参考に引用。
因みにファサードの美しさを讃えて止まないオルヴィエートのドゥオモの天井は、北方教会のような平らな板天井で、ゴシックを感じた記憶なし。
こんな天井が何で燃えるのかと思ったら、漆喰で固めた天井の裏側は木材のトラスだったからだと。といっても相応に耐火性あるでしょうから、出火したのは屋根裏なんでしょうか。
再び外に出て見上げると、ガーゴイル。
こういうところはイタリアン・ゴシックでは見ません。
横から薔薇窓。
非持ち歩きコレクションにはあるかも知れませんが、厳選コレクションには内部から撮った窓の写真が驚くほど無く、自分が興味を持っていないことがアリアリ。
裏に回り込みます。
ゴシック建築の外観で最大の特徴、高い壁を支えるフライング・バットレス。
壁を薄くする=投入する物量を削減するための、実はコスト削減策。イタリアにはあんまり無くて、ミラノのドゥオモの屋根の上くらいでしか見たことがないです。
さて。
ノートルダム大聖堂を舞台にした大イベントと言えば、「皇帝ナポレオン1世の戴冠式と皇妃ジョセフィーヌの戴冠」。
ナポレオンの首席画家ジャック=ルイ・ダヴィッドの手になるルーヴルで2番目に大きな絵。
中心を切り取った私の写真では分かり難いので、Public Domainをお借りして。
後方の柱が四角い。ノートルダム大聖堂にこんな空間は無かったぞと。実在しない理想風景を描いたプッサンやロランの後継者ということか自身の時代の単なる反映か、新古典様式のノートルダム大聖堂ですな。
フランス人セレヴの巨額の寄付が話題になっていますが、このお寺、カトリックでなく歴史的建造物として国有財産になっているらしいです。でもフランスを象徴する大聖堂ですからね、多くの清き貧民の喜捨が大事ですね。
マクロンさんが5年以内で再建とか言ったらしいのを聞いて、普通に無理でしょ、フツーに、と思いましたが、尖塔を早期に上げられるだけのデータがあるなら、そんなに難しくないんでしょうかね。
再建されたら行くかな。
注1:生憎初めから観光を組み込んだ出張日程を組めるようなご身分ではないのですが、コストコントロール上トンボ返り日程もできず、実務最終日の午後半日だけフリータイムができたのでした。で、行ったことなかったオランジュリー美術館見とこうと、雨中足元悪い中2時間程入場待ち行列して入ったのでした。
注2:大理石と石灰岩は元は同じもの。