昨日は六本木サントリーホール行ってました。
「日本・ポーランド国交樹立100周年記念 ポーランド芸術祭2019 in Japan 参加公演」。そう銘打った公演を聴くのは3月のツィメルマンさん以来です。6月の表参道・パホレツさんは、同じポーランドでもちょっと違うタイトルが付いていました。
チョ・ソンジンさんです。
一番最近のショパン・コンクール優勝者です。
この年2015年はコンチェルト賞がいません。彼を含めて、決勝でワルシャワ・フィルを唸らせる演奏をした人はいなかったということではあります。(注1)
ブーニンさんの後2回優勝者を出さなかったことの反省から、ユンディ・リさんの時から必ず優勝者を出すようになったらしいです。2015年はチャイコフスキー・コンクールと重なって有力者が分散したと言われ、まさに優勝者がいなかった1990年と似た状況です。
歴代優勝者には及ばないのでは?
…という見られ方を実力で跳ね除けないといけない、他の優勝者よりも重い十字架を背負った優勝者かも知れません。なんて考えている人自体いないかも知れませんが。
でもこの年の相対1位。ここは悔しいところですが、小林愛実ちゃん達を下した優勝者です。そして4年の歳月は彼を成長させたでしょう。
因みにコンチェルト演る日を選ばなかったのは、実力を疑ったのではなく、他のブックとの兼ね合い。
予習資料が配布されています。↓
楽曲解説を事前配布するのはあまり覚えがありませんが、何か新しい試みでしょうか。今回では、あまり馴染みのないベルクのピアノ・ソナタに解説があるのはいいかなと、個人的には。
【前半】
シューベルト:幻想曲「さすらい人」 ハ長調 D.760/Op.15
冒頭のモーツァルトが自分の好みと合わないタイム感で始まったので不安になりましたが、指の動きがスムーズになったシューベルトの中盤以降(注2)は、この人らしい流麗で美しい演奏でした。
【後半】
スタインウェイを以ってしても若干のパワー不足な印象はありますが、十指のバランスが良く取れ、掴み所の無い演奏になりがちな新ウィーン楽派を、しっかり構築した印象。
ベルクから止まらずにリスト。同じ音で切り替わるので継ぎ目をうっかり聴き落としそうに切り替わりました。「同じ音から導入したい」ということでなく、ベルクの音楽にあるロマン派からの連続性を、リストに遡ることで表現したのだと思います。凡庸なメロディで、リストであることにはすぐ気付きますがwww。
私、チョさんはクール系のピアニストだと思っていたので、静かなパートの静謐さや美しさは期待の範囲内でしたが、なかなかどうして、情熱を備えた熱い演奏でした。ちょっと意外。
【アンコール】
ショパン:ピアノ・ソナタ第2番 変ロ長調 Op.35「葬送」 第3楽章
モーツァルト:ピアノ・ソナタ第12番 へ長調 K.332 第2楽章
葬送曲を聞かされると、プログラムに書いてあっても戸惑うので、個人的にはせめて第2楽章から聴きたいのですが、演奏は「流石ショパン・コンクール優勝者」。ベルクで見せた冷徹な構築性が、ここでも私レベルのリスナー如きには非の打ち所なし。
最後はモーツァルトで温かく終了。モーツァルトの軽やかさを表現するには、真面目キャラクターをもう少し崩してもいいと思います。
ショパン・コンクール優勝者、しっかり成長していました。
S席6,800円は1階ステージに向かって右寄り。指は見えませんが、表情までよく見えたし、音もよく聴こえました。
大枚叩いた本命コンサートでもイマイチな席の予約が多いのですが、今日は良かった。値段もリーズナブルだし。
ああ、もう1つ。
この間BShiで牛牛さんをやっていて、ジュリアードで見栄えするアクションを演劇から学んだ話をしていました。丸顔小柄(頭身低め)のチョさんが小さくなって弾いていると正直見栄えがしないので、この辺の研究も進めてもらうといいかもしれません。
会場は女性多め。「韓流キャー」(注3)だったら興醒めだなと懸念しましたが、杞憂でした。
そう嫁(ピアノは主に私のテーマなので、一部を除いて同行しない)に話したら、「自分で弾く女性が多いから、あなたより詳しい」と窘められました。すいません。
この公演は、無料パンフ込み。
豪華版3,000円でも買いますが、簡易版でもいいから作ってくれるのは嬉しいです。
無かったマグマは残念。
久し振りのクラシック・コンサートで、知らぬ間に家族が勝手に捨てた「行きたい公演のリーフレット」ストックを大分回復。でも先週行ったロイヤル・オペラと、マリインスキー劇場、ウィーン・フィル、ベルリン・フィルにBBC Proms Japan(全体版)はありません。。。
注1:自転車系の方が多かろう僅かな私の読者のために書いておくと、ショパン国際ピアノコンクールというのは、課題曲がショパン作品限定、本選はワルシャワ・フィルとの共演によるショパンのピアノ・コンチェルト(2曲のうちのどっちか)限定という、ある種偏ったコンクールです。コンチェルト賞は、その決勝の共演オーケストラが選出します。優勝者が受賞するケースに限らず、2010年のように入賞者(本選まで進んだが6位までに入れず)が受賞することもありますが、最多は「受賞者なし」。
注2:私の基準は速弾き女王アルゲリッチさんなので、大概評価は厳しい。
注3:それはそれで看過できない力があり、ロック通が馬鹿にしていたクイーンを初期から採り上げてスターダムに押し上げたのは、日本の女性オーディエンスだという有名な歴史がある訳です。(が、ZEPフリークの私はやっぱりクイーンを馬鹿にしている。)