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BBC Proms JAPAN 2019 “First Night of the Proms” at Bunkamuraオーチャードホール

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オーチャードホールです。

 

www.bbcproms.jp

「プロムス」。毎年テレビでも放送する英国の有名な音楽祭を、トーマス・ダウスゴーさん率いるBBCスコティッシュ交響楽団が初めて日本に運んできました。昨日は初日「First Night of the Proms(ファースト・ナイト・オブ・ザ・プロムス)」。

 

今回はピアノじゃないのか?

 

ピアノです(笑)

ショパン・コンクール2010の優勝者、ユリアンナ・アヴデーエワさんが出演しました。

https://www.bbcproms.jp/mainstage/files/Prom1.pdf

 

コンクールでは、ヴンダーさん(コンチェルト賞)とかゲニューシャスさんとかトリフォノフさんといった並み居る才人を破って見事栄冠。しかも、DVD審査で落とされ→審査員(彼女の先生)の抗議で復活→大逆転優勝という、「(実績ないけど)ベトナム人珍しいから聴いてやろう」から優勝したダン・タイ・ソンさんを上回る(残念ながらネガティヴな視線も混じった)伝説を残しています。

以後はメジャー・レーベルと契約せず、レパートリー拡大や著名オケとの共演もゆっくりで、自分の音楽をしっかりと作ってきている印象がありますが、2010年以降毎年来日され、今年は春に続いて2回目だそうです。

 

で、レビュー。

 

嫁なし1人の昨日は、控えめにB席3階。

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但し前寄りド正面だったので、視覚的にはお得感あり。


〈プログラム〉

(第1部)

メンデルスゾーン:序曲「フィンガルの洞窟」Op.26

Mendelssohn:“The Hebrides” Overture, Op.26<Fingal's Cave>

チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番 変ロ短調 Op.23(ピアノ:ユリアンナ・アヴデーエワ

Tchaikovsky: Piano Concerto No.1 in B-flat minor, Op.23(Yulianna Avdeeva, piano)

(第2部)

マーラー交響曲第5番 嬰ハ短調

Mahler: Symphony No.5 in C-sharp minor

(アンコール)

エルガー:行進曲「威風堂々」作品39 第1番

Elgar: Pomp and Circumstance

 

ショパン・コンクール優勝者&ショパン好き日本(と私)ですが、今回は音楽祭プログラムの一部だけに、ピアノはショパンなしのチャイコフスキー1曲。

ワタシ的にはショパン・コンクール本選のコンチェルトには大した印象がなかった彼女ですが(注1)、室内楽の如き気品と精妙さのコンチェルトは高く評価されているようです。

そんな彼女に、壮麗だがデリカシーのないチャイコフスキー(注2)が合うのかどうか注目しつつ、今回の予習は手持ちのレコード(嫁のもの)落としmp4とYoutube

チャイコフスキー ピアノ協奏曲第1番変ロ短調[カラヤン][LP盤]

チャイコフスキー ピアノ協奏曲第1番変ロ短調[カラヤン][LP盤]

 

そういう印象のもとになっている基準盤↑

アヴデーエワさんのチャイコフスキー

www.youtube.com

 

葉加瀬太郎さんのMC(録音)からプロムス・ジャパン開幕、「フィンガルの洞窟」を終え、金管が増員されたところでアヴデーエワさん登場。定番のパンツルックですが、足元は第2バイオリン最後列の人のそれより高いピンヒールでした。小柄軽量な彼女がチャイコフスキー弾くのに大丈夫かしら?と余計な心配。

で、コンチェルトですが、大きなオーチャードホールの3階から聴いているから仕方ないのか些かパワー不足を感じるのと、アヴデーエワさんのアゴーギクの自由さにオケが苦労しているのか特に第1楽章は微妙にテンポが合わず、アンサンブルに隙間ができた印象。アヴデーエワさんの美点があまり出なかった演奏ではなかったでしょうか(コンセルトヘボウとのYouTube比)。音色やタッチは、コンクールで感じた程のクセはなく、綺麗でした。

 

休憩を挟んで第2部になるとピアノは撤去済み。ああ、アンコールにピアノはないのだな、と少しがっかりしたところで、3管オケで満員のステージからマラ5開始。

第1楽章「葬送行進曲」では主役のトランペットに違和感。何だか不安定じゃなかったでしょうか。一方、リードも隊全体もホルンはキレキレでした。

 

オケ全体として格別にテクニックや音色に秀でた印象はありませんが、ピアノとでは今ひとつと感じたアンサンブルは好印象でした。オケの中の意思疎通はよく練れているという感じでしょうか。

あと指揮者のダウスゴーさんがよく動きます。(特に優雅ではありませんが、)3拍子の第3楽章などは踊っているようでした。

そんなアツい指揮もあってか、第5楽章フィナーレに向けて盛り上げ、本家プロムスのような熱気を帯びたところで、ダウスゴーさんのMCからアンコールの威風堂々が始まり、会場は更に盛り上がりました。

実に手慣れた演奏に、前方の光景がロイヤル・アルバート・ホールに見えてきました。

が、日本人は威風堂々歌いません。私も歌えません。ゆえ会場一体となっての合唱はあり得ません。コーラス仕込んでおくとよかったんだろうかなどと思いながら熱演に聴き入って本日のコンサートは終了。

 

残念なのは、隣の人の鼻息がppより大きかったこと。開演時はギリギリ飛び込んできたようなので仕方ないと思いましたが、ボリュームは結局下がらず。何度も寝落ちしていたし。忙しい中頑張って仕事片付けてきたのかも知れませんが、この点は大外れ。

 

会場専用と思しきこの日のモノクロフライヤーが配られましたが、別に正方形のコンパクトな公演パンフ28ページが1,000円。

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さて、威風堂々。最終日は当然プログラムに入っています。しかし合唱団は入っていないようです。最終日の歌手はソプラノ森麻季さんだけ。会場歌えない問題はどうなるでしょうか。振るためのタオルは配られるようですが、歌詞が入ったフライヤーでも配るのでしょうか。因みに有料パンフの最終ページには日英の歌詞が付いています。

演らないと思うけどルール・ブリタニアエルサレム(注3)も同じですね。君が代に変えれば歌えますが、荘厳になっては逆効果ですしね。

野次馬的注目点でした。

 

注1:このレベルの人たちの演奏の評価は、上手下手よりも奏者の解釈による振れが自分の好みに合うかどうか次第なのですが、あまり評価されていない2015年チョ・ソンジンさんと比べても、私にはピンと来ていない。

注2:「お前が第1楽章だけ聴いて止めてるからだろ」というところが大きいのですが、2〜3楽章も大して変わりませんよね。

注3:宗教的なこととは関係なく、私はこれは歌える。だってELP グレッグ・レイクの歌でしょ。