22日土曜日は、私のトレランホームコース、甲斐駒ヶ岳に行ってきました。1年10カ月ぶりです。
もっと多く走っている箱根外輪山は、もう飽きて走っても楽しくない感じなので、ここが言うなればトレイルランナーとしての心の拠りどころ。
春の肩鎖関節脱臼の影響で山行できなかった昨年は、トレラン9シーズン目にして初めて登れませんでした。
そして今年。新型コロナCOVID-19の影響は色々なところに及んでいます。
南アルプスの大半のエリアは、山小屋営業休止、登山バス運休で、事実上閉鎖中。甲斐駒ヶ岳も多分に漏れず、往復標準8時間のメインルート・北沢峠にアクセスができないので、往復15時間の黒戸尾根かもっと厳しい19時間(注1)の日向八丁尾根しかルートがありません。
黒戸尾根ルートも、落石による梯子の破損で難所の1つが通行困難になったため、6月半ばまで登山道は通行止め(←これはコロナに関係なし)、七丈小屋は営業休止でした。営業再開後は、フィジカルディスタンスのため素泊まりもテントも完全予約制になりました。已む無く動けなくなった人を臨時で泊めることはあるでしょうけども。
という状態なので、「数少ない登れる山を目指してハイカーが殺到」することはありません。
これが山への影響。
4月の決死隊ワンオペ出勤、5月のフル在宅勤務を経て、6月から始まった隔週在宅勤務。在宅勤務開始当初は、通勤時(1日歩行10km、階段昇降±350m)同等の運動量を確保すべく走ったり階段歩いたりしていましたが、早朝から日差しが強くなった7月以降、在宅勤務週は運動サボり、徹底サボり、1日歩数は1/10の一千歩台。お陰で、走る脚力がかなり低下しました。
僅かな距離のロードランでも脹脛が筋肉痛になり、数日引き摺ります。8月11日10km走った際には筋肉痛とマメで走れなくなり、5日後の8月16日のエントリーでも「今晩は走れるでしょうか」と書きました。
走りました。走りましたが、7kmの短距離、5分37秒/kmのスローペースがやっとでした。
これが身体への影響。
さて。
竹宇駒ヶ岳神社を起点に日本三大急登とされる長大な尾根を登り詰める黒戸尾根ルートは、麓の登山口から単純標高差2,200m(延べ約2,300m)、水平移動距離8km、道程11km(ともに片道)、平均勾配30%あります。標準コースタイム15時間は、普通は1泊2日ですが、トレイルランナーのみならず、体力・スピード自慢の少なからぬハイカーも日帰り山行にやって来ます。いや、このルート、入山者の絶対数は少ないし、日帰りは更に少ないですけども。
で私。
トレーニングして体力を付け、体調を整えて入山しないといけないとされるコースですが、私にはここを走ることがトレーニングなので、往路3時間45分・復路3時間8分掛かり、ランでは初めて午前中に下山できなかった前回2018年10月以上に能力が怪しいのに、ぶっつけで登ります。
トレイルランナーのタイムトライアルはこの先の竹宇駒ヶ岳神社かその先の吊り橋を渡ったところから、というのが多いようですが、私は毎回駐車場で時計を動かします。
スタートは、ライトなし(携行は必ずしてますよ)でも足元が見えるようになった4時51分。夏至から間も無く2カ月、日の出は5時10分です。約1時間遅くなりました。
健脚でも10〜12時間普通に掛かる日帰りハイカーには真っ暗なうちにスタートする人が多いですが、ランナーは明るくなった頃相次いでスタートします。
入山後間も無く、3人のランナーを追い越し。
初めの2人組は甲斐駒初心者風。ペースから想像すると、雨(後述)に当たったのではないかと思います。寒くない標高までは下っていたと思いますが、最近のランナーは以前に増して軽装が多いので、気になります。
その次の人は、私の10分程後に登頂して来ました。下りも私に続いて開始し、七丈小屋での休憩で逆転して5合目まで先行していました。私と殆ど同じペースで移動している人は今までもいたのでしょうが、タイミングまで被っていた人がいたのは初めてだなあ。
これは黒戸尾根の有名スポット「刃渡り」です。切り立った歯の上を歩きますが、鎖があるので危なくありません。私は、下りでも鎖に手を添えて走りますが、同じことする人見たことないです。
青い夏空が広がっています。6時半前ですが、約2,000mのこの辺りでも暑いです。大汗かいて登っています。
この刃渡りの前後で初めて周囲の視界が開けます。右を見ると八ヶ岳、左を見るとこの鳳凰三山と左肩の富士山ですが、富士山は既に雲が掛かり、この後見えることはありませんでした。
刀利天狗。紙垂(しで)が真新しく感じられるのが微妙に不思議。
黒戸山の尾根を巻いて暫く下る!と、遥か遠く8合5勺付近の白い岩場と篠沢上流の滝(七丈滝だと思うが不明)が綺麗に見える5合目小屋跡。
この後屏風岩の前の梯子橋を渡ると、右手に坊主山の一枚岩が重厚。
七丈小屋です。日帰りの私は、大体復路で給水&トイレに寄るだけですが、ルート全線に亘って素晴らしく快適なのは、先代小屋番さん含めたこの小屋の皆さんのお陰です。
この後間もなく下山中のランナー2人と擦れ違いました。私より2時間程先行しているペースなので、余程速いだけでなくナイトランが多かった筈です。暑いので早く登って早く降りたいというところかと思いますが、この人達は、寄り道しなければ昼までに東京まで帰れます。
8合目御来迎場。石の鳥居は大分前に倒壊していますが、信仰登山ではここで御来光を遥拝することになっています。
8合5勺の剣の刺さった岩を見下ろします。冬だとクライミング技術が無くても雪の上を歩いて登れます。
天気がいいと、ここは登って来た黒戸尾根を見下ろし、前方に鳳凰三山と富士山を望む絶好ポイントです。本日は残念。
鮫が2匹。これが5合目から見える最高点。
これは夏でも簡単に登れます。山頂まであと15分。
早い時は5合目からの梯子場で脚が攣りますが、本日はここの手前まで保ちました。暫し脚を伸ばして回避。因みにミネラル補給は毎奇数時毎の塩熱サプリです。この10分ほど前の御来迎場で2個目を口にしています。スポーツドリンクも摂ると更に効きますが、ハイドレーションチューブが黴ると困るので私は水オンリーです。一応芍薬甘草湯も持ち歩いてますが、使ったことないです。
通算22回目の山頂は無人、静かでした。北沢峠からのアプローチがない今年は大概静かでしょう。
真上は真っ青ですが、雲の上りが早く、眺望はあまりありません。というか、2,967mまで登ったのに涼しくないです。これは本日1番残念な点。
白い雲の向こうは仙丈ヶ岳ですが。
北岳と間ノ岳は見えませんが、右下がりの稜線上にポコッと突き出した部分が間ノ岳に繋がる三峰岳2,999m。
雲が掛かっていない3,000mOverは、塩見岳と赤石岳だけでしたね。
半分雲に隠れているのは付属峰の摩利支天です。
北に目を遣ると、鋸岳の山頂は望めましたが、北アルプスや八ヶ岳の眺望は全滅。
山頂までの最後のチェックポイント駒ヶ岳神社本宮(徒歩2分)を見下ろします。
さて、本日は長居しました。山頂に18分もいました。本日2回目にして最後の行動食補給もしました。
降ります。さっさと降ります。
前の方で書いた通り、私の直後に下山を開始したランナーは、七丈小屋でトイレ&給水休憩中に逆転し、5合目までの20分近くの間私に先行していました。上から目線な表現ですが、梯子が連続するこのセクションでは、私は人並外れて速いと思っていたので。(そもそも身体を梯子に向けて後ろ向きで降りるということをしたことがない。)
5合目で件の人を含むランナー2人に先行。着いてきたのは初め件のランナーだと思ったのですが、もう1人の別の人でした。この人を従えて、というと聞こえがいいですが、私の方が遅いのでプッシュされながら、約40分間ノンストップで結構真面目に走りました。1人なら絶対にやらなかったくらいに。道を譲った後、その人はどんどん離れていき、私が追い付くことはありませんでした。そもそも5合目で私の前にいたことが不思議なのですが、下山開始間も無く擦れ違った人が小屋休憩中に追い越して行ったのかしら。いやぁ、21回来て、歩いていてランナーに追い越されたことはありますが、ランでは抜かれたの多分初めて。偶々自分より速い人と相前後したことがなかっただけだと思いますが。
綺麗な樹林帯を走りますが、もうかなり下界です。日本のデスバレー(注2)、灼熱の甲府盆地の外縁部です。暑いです。
兎に角熱中症には気を付けようと、1.5Lのハイドレーションバッグで、途中補充合わせて2Lの水を飲んでいます。
11時3分、満車の駐車場に到着。
GT-R復活しています。その話は別の機会に。
行動時間: 6時間12分(うち移動時間5時間34分)
往路: 3時間29分
復路: 2時間25分
距離: 19.84 km
登り: 2,427 メートル
降り: 2,410 メートル
GPXのデータからの分単位表示から「29分」と書いていますが、山頂の神社奥社の写真を撮った後思い出して撮ったスクショが3時間30分22秒を指していたので、29分台後半、四捨五入したら30分だったでしょう。
登りはベストタイムより35分遅いですが、ワーストタイムの前回より16分速いです。平地10kmやっとの超絶トレーニング不足のランナーにしては、まあまあでは。前回は今回より遥かに涼しい10月なのに、辛くて8合目から上では何度も立ち止まりましたしね。2時間15分くらいで登るらしいトップクラスのランナーの足元にも及びませんが、これでも私より若い大方のランナーより速いと思います。
降りもベストタイム比16分遅いですが、走れなくて歩いて降りた前回とはダンチの44分先行、サードタイ。前塞いでご迷惑だったと思いますが、速い人と走った効果ですね。
いやぁ、やっぱり楽しいな、黒戸尾根。
体力的に丁度良い、とは言い難い最近のトレーニング不足ですが、こう楽しく纏まったエクササイズができると、他の山域開拓に仲々踏み出し難いです。
さて、11時3分に下山。駐車場でアッパーウェアだけ替え、シートにバスタオルを敷いてさっさと移動します。
目的地は「尾白の湯」。午前中に下山して時間を確保できたので、寄ります。ブログネタ的に寄ります。寄りたかったんです。別エントリーで書きます。
12時に尾白の湯を出て帰路に就きました。
その頃黒戸山の上には黒い雲が掛かり、雷の音が聞こえていました。初めに追い越した2人は下山前に雨に当たったと思います。この日は各地で落雷も起きました。
夏山は雷雲が発生しやすく危険なので、15時には下山ないし山小屋に入るものだとされているし、本日のようにもっと早く悪化する日もあります。
昔「ランニング登山」とか言われていた時代は余程のエキスパートの世界だったでしょうが、ブームになった後の今はロードから入ってくる人も多く、大変な軽装です。私のようなロングスリーヴ+タイツはまず居ないし、ツエルト持っている人もいないでしょう。
この山は登山口の標高が770mくらいと低く、刃渡りから下は樹林帯の急坂を転げ落ちるだけなので、雨・雷の前に半分まで降りられさえすれば、長丁場でも低体温症や落雷のリスクは低いとは思います。が、基本は登山。全体にもっとリスク対策はした方がいいと思います。
ロード10kmがやっとの運動不足が言っても説得力ないですけども。
脱兎の如く一路東進し、約3時間後に自宅に着きました。
7月に「煽り運転厳罰化」を受けて、変化を感じたことがあります。
これも別エントリーで書こうと思います。
自車の車外温度表示は最高で38.6℃でした。
都内に入った頃から車内が冷え難くなり、汗ばむようになりました。
駐車場から荷物持って自宅に引き揚げる僅かの時間歩いただけで頭痛が始まりました。
恐ろしい暑さです。炎天下の外出は控えましょう。
長文も控えましょう。。。
注1:私が持っている「山と高原地図」2009年版では一部破線なのでタイム表記ないが、2019年版や市のピッチマップでは実線になり、時計回り還走のコースタイムは19時間になっているらしい。
注2:夏に来るといつも36℃とか東京より気温が高いので、私が勝手にそう呼んでいる。