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ダン・タイ・ソン ピアノ リサイタル at 紀尾井ホール

初めて来ました紀尾井ホール。日鉄の施設だそうです。中ホール(大ホールはない)は800席で、音響に優れたホールだそうです。

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本日はダン・タイ・ソン氏のリサイタルです。

www.hirasaoffice06.com

リーフレットのダウンロードはこちら(ヒラサ・オフィスのダウンロードリンクです)↓

http://www.hirasaoffice.sakura.ne.jp/data_files/view/1258/mode:inline

 

今回は6公演、調布含む東京2公演以外では大分や福島でも演奏されます。

 

音響に優れたホールといえば、浦安音楽ホール(愛称「さざなみホール」だと思っていたら、命名権が売り飛ばされて「J:COM浦安音楽ホール」だそうです)は、市長が替わってからイマイチ不活性状態の印象ありますが、ワールドカップラグビーのパブリック・ビューイング会場になってます。

www.city.urayasu.lg.jp

音楽芸術の拠点になるはずがまさかの展開です。もっと広い市文化会館とは立地の差があるので席は埋まるでしょうが、きっと素晴らしい音響でラグビーが楽しめます???それはいいので、もっと音楽関係のいいとこ呼んでください。

12月に福間洸太郎さんが来ますけどね。

脱線でした。

 

さて、1980年の、ポゴレリッチ事件のあった80年ですが、アジア人初のショパン・コンクール優勝者であるソンさんは、コンクールから間も無く40年を迎える61歳の今もレパートリーの中心にショパンを置く、生粋のショパン弾きと呼んでいい人ですね。

紙鍵盤伝説や「ベトナム人珍しいから聴いてやろう」伝説など、多くの伝説(少なくとも前者は事実のようです)を持つ人です。柔和な人柄(接したことがないので見た目の印象です)は、幾多の苦難を乗り越えた人のそれでしょうか。

 

1階右横、前寄りの席でした。ステージ方向に角度がついているので(私の席で1列目中央を向くくらい)、首と耳が楽でした。角度が変わらないので、後端の席は客席中央を見る感じですが、それでも対面方向を見るオペラシティよりいいでしょう。

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但し、椅子そのものは仕様が若干古い印象。背もたれが立っていて窮屈。
 

<プログラム>

(第1部)

シューベルト:ピアノ・ソナタ第15番 ハ長調「レリーク」 D840

ショパン:3つのワルツ

      9番 変イ長調 「告別」op. 69-1

      4番 ヘ長調 op. 34-3 

      6番 嬰ハ短調 op. 64-2

ショパンマズルカ風ロンド ヘ長調 op.5

(第2部)

パデレフスキ:4つの小品

      メロディ op.16-2

      伝説 op.16-1 

      夜想曲 op.16-4 

      メヌエット op.14-1 

ショパン舟歌 嬰ヘ長調 op.60

ショパンボレロ ハ長調 op.19

ショパンスケルツォ 第2番 変ロ短調 op.31

 (スケルツォは当初予定していたバラード第1番から差替え)

(アンコール)

ドビュッシー前奏曲集第1集より

      第8曲「亜麻色の髪の乙女

      第11曲「パックの踊り」

ショパンマズルカ 第13番 イ短調 op.17/4

 

ソンさんのインタビュー、というよりは事前解説があります。

www.youtube.com

 

レリークは、名前と違って遺作でなく途中放棄作ですが、完成した第1楽章と第2楽章を演奏。

転調が忙しい第1楽章が好み。第2楽章は、、、シューベルトだけに美しい歌心は感じますが、私としては曲は然程印象的ではありませんでした。

 

集中力の要るシューベルトの次はリラックスして聴いて欲しいというショパンのワルツ。

元々ダンサブルじゃないショパンのワルツですが、ソンさんの柔らかいタッチで聴く9番と6番の美しさは別格。特に好きな6番は、嫁がワルシャワに住んでいた当時大韓航空が現地のCMで大量に流していた影響で、個人的にはフィギュア・スケートの映像(多分キム・ヨナさん)が目に浮かびますが、実に優雅でした。

いかにも16歳らしい派手なロンドを煌びやかに演奏して第1部終了。

 

パデレフスキは、、、ポーランド🇵🇱では冠ピアノ・コンクールがあります。来月ビドゴシチ“BYDGOSZCZ”で第11回開催。ピアニスト兼作曲家兼首相❗️だった才人は、周辺国に蹂躙され続けたポーランドのために戦った偉大な政治家、というか愛国者だそうです。日本の「文化人」達とは大違い。作曲家としてよりも、ひと昔前のショパン楽譜の主流、パデレフスキ版の「パデレフスキ」さんとしての方が有名でしょうか。

生誕100年(来年)、建国100年(去年。日本との関係では今年は国交樹立100年)で採り上げたそうです。最近見直されているということで、ソンさんの録音が一昨年発売されましたが、Amazonにはありません。うーん🧐。

初めて聴いた曲は「遅れてきたロマン派」な印象で、ショパンよりリストの影響が強いように感じましたが、メヌエット以外あまり耳に残りませんでした。作曲家としては正直どうかな。。。小曲4曲聴いただけですが。

 

ソンさんはオーソドックスな演奏をする人だという印象を持って聴きに来ていましたが、ショパンで最も演奏が簡単らしいボレロを挟んだ今日のハイライト舟歌スケルツォ第2番は、ともにディナーミクとアゴーギクを大きく取ったロマンティックなものでした。但し、「ピアノの詩人」と称されるソンさんらしく、繊細なタッチはそのまま、ショパン本人もこう弾いていたのでは?と思わせる詩情溢れる美しい演奏。

私はケレン味たっぷりのイタリアンやフレンチが好みですが、ソンさんの演奏は美味しい素材を活かしつつ美しく盛り付けた上品な日本料理。☆☆☆。

 

アンコールはドビュッシー2曲、「亜麻色の髪の乙女」は、ソンさんの日本語MCから。曲調は美しい長調の「亜麻色」からめまぐるしい「パック」へとガラリと変わりますが、色彩豊かなドビュッシーを旅する、オマケ感なしの濃厚な世界でした。

再び日本語での紀尾井ホール公演10回目の感謝の言葉から、シンプルで美しいマズルカで終演。

遅めの拍手のなか、余韻が消えるまで聴き入りました。コンクール優勝から40年の探求を経たショパン演奏の1つの到達点だと思います。堪能しました。

 

今日は見える眼鏡を忘れて矯正視力0.3くらいでしたが、小さいホールの割と前の方だったので、ソンさんの顔もよく分かりました。一貫して割と渋い表情で演奏する人ですが、演奏を終えて拍手に応える時の笑顔がチャーミング。

 

終演後はサイン会がありましたが、帰路を急ぎました。

高額チケットで有名なK社招聘アーティストではないので、次のチャンスもあるでしょう。

グラモフォン/デッカの全集に入っていないこともあり、彼のCDは持っていないのです。サイン貰うのは、リサイタル会場で1枚買って貰うんでなく、よっく聴き込んでからにしないと(セルフ・レギュレーション)。

 

パンフレットはチケット代に込みの小冊子、見開き6ページでした。

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