ツィメルマンです。
当代最高のピアニストの1人です。今や彼を評するのに「の1人」は要らないかも知れませんが、ワタシ的にはMost Favoriteではないので、“one of”が入ります。
私は元々、ライヴはあまり行きません。
だってほら、音楽に没頭したいのに「1曲目から総立ち❗️❗️」とか冗談じゃないし。これはロック系の話で、クラシックは寧ろ財布の都合が立ち塞がるオペラ好きの私。
偶に奮発して著名歌劇場の来日公演で嫁と後期ロマン派オペラを聴くくらいなんですが、昨年11月のKING CRIMSONのとき書きました。
軒並み古希を迎えている巨匠たちを、見れるうち、聴けるうちに見、聴かないと後悔するぞ❗️
これも基本的にロックを念頭に置いているのですが、クラシックも同じ。クリムゾンの少し前に来日していたポリーニの日経新聞の鑑賞評を読んだときに「あ、これはヤバいかも😰」と思いました。
思えば、90年に揃った私のワーグナー・CDコレクションの指揮者は、大分昔に亡くなったクナッパーツブッシュを除いて全員存命だったのに、1人として聴かないうちに鬼籍に入りました。スケジュールの都合でショルティ指揮シカゴ響(注1)と財布の都合でC.クライバー指揮ウィーン国立歌劇場の来日公演の鑑賞を見送ったことが特に悔しい。
ワーグナー・CDコレクションから最愛聴盤。
- アーティスト: ショルティ(サー・ゲオルグ),ドミンゴ(プラシド),ディースカウ(ディートリッヒ・フィッシャー),ニムスゲルン(ジークムント),ノーマン(ジェシー),ランドヴァ(エヴァ),イェロージッツ(ペーター),ゾーティン(ハンス),モーア(トーマス),ワーグナー,ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
- 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
- 発売日: 2011/06/22
- メディア: CD
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保守的なワグネリアンにはウケが悪いですが、オペラ・ロマンティカの最高峰に相応しいプラシド・ドミンゴのベルカント・ローエングリン。これがハマった人にとっては、ドイツ・オペラのテノールなどあまりに平板でつまらなくなります。
異色にして豪華過ぎるキャスティングは、サー・ゲオルグ・ショルティの希望だったそうです。こういう録音を聴いてしまうとライヴから足が遠退かざるを得なくなる、オーケストラも歌手も圧倒的な空前絶後の名盤です。オリジナルの発売は86年。
本題に戻ります。
ツィメルマンはまだ若いです。62歳です。丁度いいとこです。早逝する人でなければ、プレーヤーならもう10年、コンダクターならあと20年はいい音楽を聴かせてくれる年齢です。
彼はほぼ毎年のように来日公演しています、というか日本に家を持っている親日家さんです。今回は2月16日から3月16日までの8回公演、私が聴いた3月5日は追加公演です。超人気のツィメルマンなので当然の如くチケットは早々に完売していましたが、1月17日にこの追加公演が決まり、日程微妙な嫁を切り捨てて2月1日にチケットを1枚だけゲットしました。
身の程を弁えずにレビューします。
(会場内は開演前も含めて一切撮影禁止と言われたので、写真無し。)
本日のセットリスト。2パターンあるうちのBセット。
(休憩)
第1番 ロ短調 Op.20
第2番 変ロ短調 Op.31
第3番 嬰ハ短調 Op.39
第4番 ホ長調 Op.54
アンコール
ブラームス:4つのバラードからOp.10-1,10-2,10-4
ショパン好きとしては、「ショパンの真の解釈者の発掘」を開催理念とするショパン・コンクールの75年優勝者が40年経った今どんなショパンを聴かせてくれるのか、と期待したいところですが、幅広い作曲家を最高の演奏が出来るまで徹底研究してから演奏する音楽家として有名な彼が今更聴衆の前でキャリア初期のレパートリーであろう英雄ポロネーズやらピアノ協奏曲第1番やらを弾いてくれることを期待するのは仲々難しい(注2)。そんななかで、ショパンを5曲(8曲でなく5曲というのが正しいのだと思いますが)弾くプログラムというのは嬉しいところ。
「Nasza Polska!」(注3)と賞賛したくなるものとはちょっと違う、ポーランドの民族性というショパン弾きに往々にして強く求められる要素をあまり感じさせない、偶々ポーランド人🇵🇱だった超絶の天才のピアノです。
必ずしも楽譜に忠実な訳ではなく(注4)、強弱緩急の出し方が私の好みとも違うのですが、1音1音が圧倒的に美しい演奏でした。バーンスタインと親交の深かった人ですが、音楽は寧ろカラヤンに近い印象があります。
総じて地味なマズルカが、彼の手に掛かると煌く宝石になります。こんな風に弾ける人も他に心当たりがありません。
↑マズルカがこれと同じように聞こえます。やっぱり凄いよ、あなたは。
一方ブラームスですが、元々あまり馴染みがありません。家にあるのはフルトヴェングラーの交響曲第4番だけ。(注5)
馴染みのないメロディが、美しく奏でられます。→心地よさに眠くなります。→ウトウトしながら聴いているうちに演奏が終わりました。あまりに心地良かった。うーん、流石子守唄の作曲家だ。アンコールのときは100%覚醒でしたけども。
スケルツォはショパンの人生に準えられるようです。協奏曲第1番等よりも解釈の難易度が高く、聴き込みが足りない(注6)ワタシには脳裏に情景を浮かび上がらせることが難しいのですが、重い第1番から燃え上がる第3番を経て軽やか且つ穏やかに第4番を終えるまで、至福の40分でした。
今年第1四半期のライヴはこれが最初で最後。
この期間中公演を行なったアーティスト中私のセンサーに掛かったものとしてはこの辺 ↓があったのですが、参戦せず。
イエス→2月来日(済)。所謂プログレ四天王としてキング・クリムゾン同等の特A高齢外タレの結成50周年記念来日公演でしたが、珍作“Union”を除くとイエス名義のアルバムとしては“Close To The Edge”、“Fragile”しか持っていないABWH>90120の私は食指が動かず。
オジー・オズボーン→3月21日“Download Japan 2019”にヘッドライナー出演(だと思う)予定でしたが、入院によるツアー中止に伴い、2月19日に出演キャンセル決定。元々他の出演者や全席スタンディングなど色々と興味を引かない要素がありましたが。
ユーライア・ヒープ→3月19〜21日ビルボード・ライブ出演予定。私にとってヒープはミック・ボックスよりケン・ヘンズレーと特に故デヴィッド・バイロン。つまりは「既に聴けなくなったアーティスト」なので食指が動かず。あまり評判よくないですが、そのラインナップで来日した73年の武道館の“July Morning”が特にImpressiveです。“Classic Heep”(DVD)に収録されている映像はスタジオ版の音声に差し替えられているので全くダメです。
以上です。
注1:別の日に振ったバレンボイム(現役)は聴けたのですが、私はバレンボイムでなくショルティのファンなのです。
注2:この点、ショパン弾きの方が多くいらっしゃる日本は、ワルシャワの次くらいに期待した曲を聴けそうな幸せ。昨年聴いた仲道郁代さんの英雄ポロネーズは素晴らしかったです。
注3:「ピアノの森」第16話で一ノ瀬海君が浴びた声はこれだったんじゃないかと思いますが、 この言葉が一番フィットするピアノはレフ・シマノフスキのそれじゃないかしらと思う私。ツィメルマンは敢えてを例えるなら、同じポーランド人でもカルロ・アダムスキですね。
注4:この点においてはポリーニの右に出る人はいないんでしょうが、生憎ポリーニは私にはさっぱり面白くないです。最近の演奏は分かりませんが。
注5:偶々嫁が持っていたものがフルトヴェングラーでした。私の趣味ならC.クライバーですが。
注6:ショパン・ライブラリー構築途中で、デッカ/グラモフォンの優秀な演奏者による演奏で効率よく全曲が揃うということで購入したユニバーサル・ミュージックのコンプリート・エディション。スケルツォはワタシ的に外れのポリーニ↑ということもあってあまり聴きません。
注7:贅沢言えばもう一拍待って欲しかった。